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【Podcast:第8弾】本間政雄の高等教育ラボ④:なぜ日本の大学は「選ばれない」のか? 留学生640万人時代に現場が直視すべき「世界の現実」と「英国の戦略」
皆さま、こんにちは。「エデュ研ラジオ」は、株式会社エデュース学校経営研究所が運営する、教育機関の皆さまに向けた情報発信Podcastです。
今回の記事では、Podcast「本間政雄の高等教育ラボ」第8回の内容を凝縮し、「なぜ英国には高い学費でも人が集まるのか?」そして「内向きな日本の学生をどう変えるか?」について考えます。
世界は「留学生640万人」の争奪戦へ。日本の現在地は?
まずは、世界の動きを数字で見てみましょう。
●世界の留学生総数:2000年の160万人から、2023年には640万人へ(4倍増!)
●日本のシェア:同期間で4%から3%へ低下
世界中の大学が優秀な学生を奪い合っている中で、日本はまだその土俵の真ん中に立てていないのかもしれません。
なぜ英国の大学は「高くても」選ばれるのか?
こういった状況の中で留学生を増やしている国の代表格が英国です。
「英語圏だから有利なんでしょ?」と思いがちですが、それだけではない「したたかな戦略」が見えてきました。
Podcast内で語られた日本と英国の違いを整理してみます。

かつての植民地支配を受けた国の人々にとって、英国は歴史的に複雑な感情を持つ相手です。しかし、だからこそ「支配者層の文化や論理を学び、対等に渡り合うためにオックスフォードやケンブリッジを目指す」という強烈なモチベーションが働いています 。
歴史的に埋め込まれたブランド意識が旧植民地国のエリート層を元宗主国である自国に取り込む装置として大学を機能させている、そのような視点が提示されました。。
英国大学における留学生獲得は、学びの内容の充実はもちろん「キャリアパスとしての実利」や「ブランド価値」など多面的に勝負していると言えるでしょう。
「内向き」な日本の学生に火をつける処方箋
一方で、日本人学生の送り出し(留学)も深刻です。
留学を希望する日本の若者はわずか3.1%。韓国や中国、インドなどが軒並み高い数値を出す中で、圧倒的に「内向き」です 10。
英語力(TOEFL)もOECD平均を大きく下回る中、本間先生は「準備が整うのを待っていてはダメだ」と提言されています。
「英語も話せない、社会意識もない。そんな学生と嘆いていても始まらない。とにかく現場に放り込むこと」
具体的には以下のような「荒療治」とも言える施策が挙げられました。
●強制的な異文化接触:海外に行くだけでなく、国内で増えているインバウンド(訪日客)ボランティアや、留学生との共同生活(寮)を活用する 。
●短期でも「外」へ:2週間でもいいから、まずは日本の外の空気を吸わせる。フィリピンなど近隣アジア諸国での英語研修も有効な選択肢です。
机の上で勉強してから…ではなく、「体験が先、語学は後からついてくる」というマインドセットへの転換が必要なのですね。
編集後記:研究員の視点
今回のエピソードでなるほど、と思ったのは、Love-Hate Relationshipです。高等教育の枠組みから留学生獲得を捉えがちですが、それよりもより大きな枠組み、植民地と旧宗主国という枠組みから留学生募集を捉える視点は高等教育というシステムが社会とのつながりの中にある、という言われてみれば当たり前だが、見落としがちな観点について気付かされるものでした。
Podcast内でも紹介させていただきましたが、ある学校様ではグローバル教育と平和教育を兼ねて、学生・生徒をインバウンドの旅行者への案内役として活動するプログラムに取り組んでいらっしゃる学校もあります。
英国のような数百年のブランド力は一朝一夕には作れませんが、目の前の留学生一人ひとりに対するサポートや、日本人学生の背中を押す小さな仕掛けなら、現場からでも始められそうです。
(文責:エデュース学校経営研究所 ブログ編集部)
▼Podcast本編はこちらからお聴きいただけます
今回の記事で触れきれなかった、本間先生による「英国大学の歴史的背景」や「具体的な大学改革の事例」など、深みのある議論はぜひ音声でお楽しみください。
#8-1 海外大学における留学生受け入れの現状
#8-2 英国に旧植民地から留学生が集まる理由:歴史に埋め込まれた「愛憎関係」とは
番組は、Spotify、Apple Podcast、Amazon Musicでご視聴できます。

語り手
特別首席研究員:本間 政雄
エデュース学校経営研究所特別首席研究員
1971年名古屋大学法学部卒、旧文部省入省。London School of Economics修士。
旧文部省総務審議官を経て、2001年京都大学事務局長(04年理事・副学長)。
07~12年立命館副総長、立命館アジア太平洋大学副学長。
13~14年関東学院常務理事。
05年大学マネジメント研究会を設立し、会長を務める。
聞き手
エデュース学校経営研究所 研究員:栗原 智、土生 秋子
【お問い合わせ先】
エデュース学校経営研究所
Mail:esmi@educe-ac.com
HP:https://www.educe-ac.com/blog/