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【Podcast#11】「大学の現在地:『学び』に向き合う学生たち」①

第1弾:偏差値だけで選ぶのは「もったいない」?現役大学生と語る、迷いながら見つけた進路選択

皆さま、こんにちは。「エデュ研ラジオ」は、株式会社エデュース学校経営研究所が運営する教育機関の皆さまに向けた情報発信Podcastです。

◆新シリーズ始動!「大学の現在地:「学び」に向き合う学生たち~大学生は、どう学んでいるのか~」

今回から、新企画「大学の現在地―学びに向き合う学生たち」というシリーズがスタートしました。
メディアで語られる「消費の主役」や「社会問題の当事者」といった特定の側面だけを切り取るのではなく、
「学びの主体」としての等身大の大学生にスポットを当て、彼らがどう学びに向き合い、
その先を描いているのかを深掘りしていきます。

企画のきっかけは、研究員の読書会でテーマとした1冊、『〈学ぶ学生〉の実像』(勁草書房、2024年)でした。
同書は、これまでの大学教育をめぐる議論が「学ばない学生をどう学ばせるか」に偏りがちであり、
「学生が学びに向き合った先に何があるのか」については十分に語られていないことを指摘しています。
私たちは同書の問題意識に共感し、学びに向き合う学生の姿を発信することが、
大学生、ひいては大学や教育そのものへの信頼を高めることにつながると考えました。

そこで、このシリーズでは、大学生をゲストにお迎えし、彼らが今、何を感じ、どう学びに向き合い、
その先にどんな未来を描いているのかをインタビューし、紐解いていきます。

記念すべき第1回のゲストは、山梨英和大学4年生(取材当時)の二村さん。
長野県の通信制高校から進学し、
この春から西日本の有名大学院で「医療統計学」という新たな道を歩み始める彼女に、当所研究員がお話を伺いました。

1. 葛藤の高校時代と「大学へ行く」という揺るぎない意志

研究員: 本日のゲストは山梨英和大学の二村さんです。よろしくお願いします!
               さっそくですが、二村さんのプロフィールから伺っていきます。長野県のご出身で、高校は通信制に通われて
               いたそうですね。

二    村:  はい、中学2年生の3学期に体調を大きく崩してしまい、学校に通えなくなってしまいました。
                高校は一度全日制に入学したものの通信制へ移り、体調のこともあって受験までほとんど勉強ができてい
                ない状態でした。

研究員:  勉強ができる状態ではなかった中で、大学進学への気持ちを保ち続けられたのはなぜだったのでしょうか?

二    村: 正直に言うと、気持ちを維持していたというより「大学以外が見えていなかった」んだと思います。
                高校を卒業して就職するという選択肢が最初から頭になく、悪く言ってしまえば現状や現実が見えて
                いなかった部分もあるかもしれませんが、
                中学生の頃から「心理学を学びたい」とずっと思っていたので、勉強ができていなくても「絶対に大学に行く」
                という道しか考えていませんでした。

研究員:  心理学には、いつ頃から興味を持っていたのですか?

二    村: 小学生の時、通信教材の案内か何かで、自分の「脳波」を測ってもらう実験イベントに家族や友達と参加し
                たんです。
                自分が勉強している時や活動している時に脳がどう動くのかを見てもらったのが面白くて、そこから脳科学
                や神経系の働きに興味を持ち始めました。

2. 山梨英和大学との出会いと「少人数教育」の力

研究員: そこから、県外である山梨英和大学を選んだ決め手は何だったのでしょうか?

二    村: 長野県から比較的近くて心理学を学べる大学を探す中で、将来的に「公認心理師」や「臨床心理士」
                の資格を取るために、大学から大学院まで繋がって学べる環境があったことが大きいです。
                あとはオープンキャンパスに行った時、
                ごちゃごちゃしていない、ゆったりとした雰囲気がすごく自分に合っているなと感じて選びました。

研究員: 実際に大学に入学してみて、高校までの勉強スタイルとの違いに戸惑いはありませんでしたか?

二    村: そもそも高校時代に全く勉強していなかったので、「当たり前の勉強の仕方」が頭から抜けていて、
                逆にすんなり入れました(笑)。
                ただ、大学には「テスト期間」がないので、普段の授業がある中で自分で時間を作ってテスト対策を
                しなければならないことには戸惑いましたね。

研究員:  1人暮らしや、毎日の通学にはすぐ馴染めましたか?

二    村: これまでほとんど通学していなかったので、体力的に学校に行くこと自体が大変でした。
                でも、1年生の前期は時間割を工夫して金・土・日を3連休にして、毎週しっかり体を回復させるように
                していたので、後期からはだいぶ楽に通学できるようになりました。

研究員: 授業にすんなり入れた背景には、大学のサポートなどもあったのでしょうか?

二    村: 山梨英和大学は少人数教育に力を入れていて、それには助けられました。
                入学時は高校のクラスの半分(15人程度)の規模で大学生活に慣れるための授業があったり、
                英語・国語の文法やレポートの書き方を学ぶ授業がありました。
                分からないことがあれば、隣の友達や前の先生にすぐ聞ける状態だったので、安心できたんだと思います。
                授業でも3〜4人のグループで問いについて話し合って発表する機会が多く、発言が苦手な子もいる中で、
                大人数よりも意見が出やすく、友達とも仲良くなりやすかったです。
                先生もグループには入らず、学生主体で進めたものに対してフィードバックをくれるという関わり方でした。

3. 「すべてが難しかった」心理統計学へののめり込み

研究員:  大学での学びに、エンジンがかかった瞬間はいつ頃でしたか?

二    村:  2年生から専門領域が始まり、心理学を本格的に学ぶ中で「心理統計学」という数学を使う授業に
                出会った時です。
                私は中学から数学の勉強の積み重ねがなかったので、「私はいつ置いていかれるんだろう」という不安と
                ずっと戦いながら受けていました。

研究員:  難しいと心が折れそうになりますが、どうやってその不安を解消したんですか?

二    村: 正直、解消しなくて、「ずっと全部が難しかった」です(笑)。
                2年生の後期にはプログラミングツールを使った分析などもやったのですが、1回「分かった」と思っても
                応用になるとまた分からなくなる。
                授業中はいつも先生に恨み言を言いたくなるレベルでした。
                でも、公認心理師になりたい人は必須の科目で、周りのみんなも大変だからこそ、
                「これってこうじゃない?」「いや違うと思う」と徹底的に議論し合いながら勉強したんです。
                それがすごく楽しくて、のめり込みました。

研究員:  仲間との議論以外に、助けになったものはありましたか?

二    村:  担当の先生の存在です。中学レベルの数学が分からないと言っても、本当に初歩的な質問から
                丁寧に教えてくださいました。
                アポイントも取らずに研究室のドアをノックして、「今、質問いいですか?」と聞きに行ける環境に
                ものすごく助けられました。

研究員:  多くの学生は「大学に入ること」が目的になってしまいがちですが、
                二村さんの場合は「カウンセラーになる」「大学院に行く」という先を見据えていたからこそ、
                授業ごとの成績にもこだわって、学びのレベルを一段上げて過ごされていたんですね。

4. 大きな決断:なぜ苦手な「統計学」の道が腑に落ちたのか

研究員:  当初はカウンセラーを目指して入学し、内部進学も規定路線だったと思いますが、そこから「外部の大学院」へ進路を変えられたのはなぜですか?

二    村:  2・3年生と授業を受ける中で、「私はカウンセラーに向いていないんじゃないか」と思い始めたんです。
                カウンセラーは人の話を聞き、クライアントの心だけでなく自分自身の心についても深く考える必要があり
                ます。
                その関係性の中で、私自身の体力が持たないと感じました。

研究員: そこで、一番苦労していたはずの「統計学」を選んだ背景には何があったのでしょうか。
                元々はスポーツ心理学や神経心理学にも興味があったとのことですが。

二    村: そうなんです。最初は脳科学のイベントがきっかけだったこともあり、
                スポーツ心理学や神経心理学の分野を目指して、色々と外部の大学院を見学していました。
                でも、将来の職業や研究の先行きを考えた時に、「絶対にどこかで行き詰まる」と確信してしまったんです。

研究員: その「行き詰まり」とは、どういう意味でしょうか。

二    村: 大学院修了後の「職業」としてのイメージが不透明だったこと。
                そして何より、自分自身の「研究」に対する見通しの甘さに気づいたからです。
                頭の中に「やりたいこと」はあっても、それを修士論文として形にしていくプロセスを考えた時、
                自分の計画では絶対に途中で立ちゆかなくなる、行き詰まるなと自覚しました。

                そんな時に、外部の大学院へ学生をよく送り出しているゼミの先生から、
                将来の道筋が明確な医療系の統計学(データサイエンス)の分野を勧められました。

                最初は「統計なんて絶対に嫌だ!」と強く抵抗していました。
                でも、先生から医療統計の道筋や職業としての明確さを聞くうちに、
                漠然とした「好き」を追って行き詰まるよりも、確実に自分の道が拓け、専門性を社会に活かせるこの道の
                方が、自分に合っているかもしれない、現実的な選択であると納得できたんです。
                あんなに嫌だったはずの統計の道が、一番「腑に落ちる」納得感に変わりました。

研究員: ゼミの先生が、学生一人ひとりの適性や将来を見越して、具体的なアドバイスをしてくださったのも
                大きかったですね。

5. 退路を断って挑んだ大学院受験と仲間の存在

研究員: 外部の大学院受験への道のりは、いかがでしたか?

二    村: もう、すっごく苦しかったです。4年生までにほとんどの単位を取り終えていたので、
                4年生の前期も後期も取っているのは卒業論文の授業だけで、あとは朝から晩までずっと受験勉強をして
                いました。
                TOEICの点数を上げるのも大変でしたし、何より「大学院レベルの統計学」が待っていました。
                ある程度統計ができるようになった自負はあったものの、やはり過去の数学の積み重ねがないことが
                大きく響きました。

研究員: そこでまた大きな壁にぶつかったんですね。

二    村:はい。
                「やっぱり私、統計に向いてないな」と何度も思い、1人で泣きながら勉強することもありました。
                でも、就職活動も一切していなかったので、もう逃げ場を断ってしまっていたんです。
                「ここでやるしかない」と、全然解けない問題集を何周も繰り返しました。

研究員: その苦しい時期を乗り越えられたのは?

二    村: 週に1回のゼミの存在です。私の周りには、内部進学でカウンセラーを目指す子や、同じゼミで別領域の
                外部大学院を目指す子がいました。
                分野は違っても「試験勉強、マジで苦しいね」と話しながら、ゼミの仲間や先生と過ごす時間に本当に
                支えられました。
                直前になってなんとか間に合い、ギリギリで自信を持って試験に挑むことができました。

6. 偏差値を超えた「中身」の選択と、これからのビジョン

研究員: 4年間、本当に投げ出したくなる瞬間もあったと思いますが、春からは新生活ですね。
                将来はどういったビジョンをお持ちですか?

二    村: 今後学ぶ医療統計学の分野でも、大学で学んできたように
                「1つの領域の考えに縛られない」多様な視点を持つことが大事だと思っています。
                山梨英和大学は3領域(心理・グローバル・情報メディア)を横断して学べる環境があり、
                大学院での論述試験などでもその考え方がすごく役に立ちました。
                将来は医療統計の仕事に就く予定ですが、
                その軸は持ちつつも、1つの仕事に縛られず、年齢を重ねながらずっと成長していけたらと思っています。

研究員: 最後に、これから進路を選ぶ高校生へメッセージをお願いします。

二    村: 大学への進学検討時、最初は偏差値を気にしていました。
                元々行きたかった国立大学には偏差値が届かず、今の大学に進みました。
                でも、山梨英和大学に入って断言できるのは、「偏差値だけで決めるのは本当に勿体ない」ということです。
                中身を見なきゃ何も分かりません。

                もし私が別の大学に行っていたら、今の自分は絶対にいませんでしたし、
                まさか自分がこんな風に大学院に行くなんて想像もしていませんでした。
                「大学でどんなことを、どんな風に学ぶのか」「どんな人と出会えるのか」
                そこをしっかり見ることが大学選びにおいてすごく大事だと思います。

【編集後記】4年越しの伏線回収と二村さんからのメッセージ

今回、「学生さんがどう学んでいるか詳しく聞きたい」と山梨英和大学さんにご相談して二村さんをご紹介いただいたのですが、
実は数年前、私たちが「アドミッションポリシーを体現している学生さんにインタビューさせてほしい」とお願いした際、
当時1年生だった二村さんにインタビューしていたんです。

当時の彼女が語っていた「公認心理師になりたい」という目標が、
4年間の真剣な学びと葛藤を経て、「医療統計で社会に貢献する」という、より具体的で力強いビジョンへと進化していました。
大学が目指すべき教育の成果として、次へ羽ばたいていくストーリーに立ち会わせていただいた思いで、勝手ながら感慨深くお話を聞かせていただきました。

大学が提供する少人数教育や横断的な学びの環境を、学生が自らの力で、仲間と共に最大限に活用し、道を切り拓いていく。
二村さんの歩みは、まさに「大学という場が持つ価値」を証明してくれていると感じさせてくれるインタビューでした。

また、収録後に二村さんからメールで、こんなメッセージをいただきました。

          「中学・高校で勉強ができなかった人が、周囲と同じペースで学ぶことのできる機会として、
              偏差値を重視しない大学も必要だと考えます。
              昨今、いわゆる”Fラン”を廃しようという論調がSNS等ではありますが、
              こういった大学があるからこそ救われる人がいるということを知っておいてほしいです」


大学の価値は多面的です。
偏差値といった一定の評価軸ももちろん大切ですが、
「他ならぬ自分自身がそこで成長できるかどうか」が何より重要なんだと気付かされます。

今回の二村さんのエピソードを、自分と向き合った進路選択、そして大学生活の一つの実践例として、
リスナーの皆さんにとらえてもらえたら嬉しいです。

二村さん、貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました!
新天地でのさらなる飛躍を、エデュ研研究員一同、心より応援しております。

またご協力いただいた山梨英和大学のご関係者様にも、この場をお借りして御礼申し上げます。
どうもありがとうございました。

(文責:エデュース学校経営研究所 ブログ編集部)

▼Podcast本編はこちらからお聴きいただけます

今回の記事で触れきれなかった、インタビューの詳細はぜひPodcast本編でお楽しみください。

#11-1 大学の現在地:「学び」に向き合う学生たち

番組は、Spotify、Apple Podcast、Amazon Musicでご視聴できます。


語り手
二村さん(山梨英和大学 人間文化学部人間文化学科 4年生)

※2026年3月インタビュー当時


聞き手
エデュース学校経営研究所 研究員:栗原 、髙橋、土生 

エデュ研ラジオでは今後も、大学経営を取り巻く様々な視点で情報提供をしてまいります。ぜひチャンネル登録をお願いいたします。
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